職員の自立度評価ISM
事業成功のためには、指示されたことだけではなく、組織の進む方向を理解したうえで自ら進んで活動する自立した職員が必要です。なので我々はながく組織と職員にとっての自立について検討してきました。
支配や助力を受けずに自立し組織とフラットな相互関係をつくる力のある職員を数多く生み出し、職員間、社外間の連携を誘導することで組織はどのような環境においても成長し続けることができます。
職員に自立してもらうために組織はどのようなマネジメントを行えばよいのかについて検討します。我々の開発した自立のためのマネジメントISM(イズム)を紹介します。
ISM(Independence Stage Management)では、職員の自立の状況を4つのステージに区分し、それぞれのステージにいる職員に適切なマネジメントを行うことで、できるだけ多くの職員に自立を促す方法です。自立した職員は、組織内外の連携を通じたより一層の高い成果を挙げていけるようになります。
ISMは、次のプロセスで実施します。
- 全職員のステージ評価
- 課題抽出
- コミットメントによる課題解決目標化
- 解決支援
- 課題解決によるステージ移動
まずは、「全職員のステージ評価」を行うための4つのステージを説明します。
ステージは自立度を組織への依存度と独立度の組み合わせで構成します。組織に依存している程度を評価し、併せて組織から独立している程度を評価することで自立の状況を焙りだそうとするものです。
さて、組織は適切な人材配置と仕組みにより組織目標を達成していきます。組織ミッション達成のためには職員の貢献が不可欠です。職員の貢献があることで組織は所期の目標を達成できます。しかしISMでは貢献度を評価基準にしていません。一般的にはルーチン業務をしっかり行うことでも組織への貢献は生まれますが、真の「貢献」は自立した職員が連携し成果を挙げて初めて到達する領域であり、自立の状況を直接判断する基準ではなく帰結です。
さまざまな理由により環境が短期間で目まぐるしく変化する現状では、職員が予め設定された活動目標や行動様式を受容れ順応するだけでは、組織は柔軟な環境適合ができません。従来のやり方である時点での組織目標を達成しようと活動することも必要ですが、指示通りに仕事をすれば事足りる時代ではありません。ほぼ同じことを続ける日々から抜け出せない度合いを依存度と言っています。「確実に同じことができる」高い依存度を持つことも重視しつつ、それだけでは不十分な領域を独立度で評価します。
ここに、依存度においては、組織目標達成のために規律を持ち協調して行動しているか、また自らの役割に対し、責任をもち積極的に行動しているか、結果として目標を達成し実績を挙げているかが評価されます。規律、協調、責任、積極の4項目は、仕事に対する姿勢や態度をみる情意考課の項目でありとても身近です。実績については業績考課の対象でもあり、評価する組織において現状の評価制度と親和性が高いと考えています。
そして独立度です。仕事ぶりが従順で実績が挙がったとしても、言われた通りに行動し低い生産性を以て成果を挙げているのでは組織は変わることができません。独立度は、職員一人ひとりが、これをやりたい、こうなりたい、こうしたいという思いを信念に変え、自分の進むべき道をはっきりさせて、それぞれの得意分野でプロとして独立している度合いをいいます。
独立度の高い人は、将来を見通したうえで目標を持ち粘り強く取り組むことで周りを巻き込み成果を挙げます。置かれた現状を改革し組織を変えていける人です。独立度が高ければ、組織文化や風土や計画、仕事の方法に順応しても依存せず、自らが率先して価値を生むことができるのです。
常に向上心をもち、技術を身に着け、人から求められる職員になるよう取り組むとともに人としての気遣いや思いやりをもち他者の力を引き出すなか、ともに改善や改革を進め生産性向上や価値創造を行なっているかどうか職員に求められている自立の要素です。独立度として、向上心、技術力、人間力、コミュニケーション力、改革力の程度が評価されます。
上記より、
組織への依存度は、
1規律
2協調
3責任
4積極
5実績
により評価するし、
そして、組織からの独立度は、
1向上心
2技術力
3人間力
4コミュニケーション力
5改革力
により評価することが分かります。
上記で説明した依存度を縦軸に、独立度を横軸にとります。依存度は下から上に、また独立度は左から右に値が高くなります。そこに生まれた空間を4つのステージに区分します。
左下 低依存度・低独立度
左上 高依存度・低独立度
右下 低依存度・高独立度
右上 高依存度・高依存度
がそれらです。
それぞれにはステージの特性を表現する名称を付しています。
低依存度・低独立度 ハンモック
高依存度・低独立度 ベッド
低依存度・高独立度 チェアー
高依存度・高独立度 スタンディング
がそれらです。
職員のステージの把握と自立促進
ハンモックのステージにいる人は「リゾート職員」と呼ばれます。ハンモックは南国のイメージ、休暇のときの時間をゆっくり過ごすときにリラックス効果を得ることができます。自立度でいえば、面従腹背してやらない、言われたこともできない、向上心もない、現状を気にしないという気楽な状況です。
ただ、ハンモックは使うと分かりますが、揺れはするものの制約があり寝返りすら打てません。横になり方を間違えると腰にも悪いといわれています。降りるときにも降りづらく不安定であり、よほど芯が強くなければ、ハンモックにとどまり続けるのは困難です。
しかし、このステージに位置する自立できていない職員が意外と多い組織もあるので注意が必要です。彼等がそこにいる理由を解析し現状を打開出来るよう支援します。
ベッドのステージにいる人は「ぬくぬく職員」です。組織目標達成のために、それなりの姿勢や態度をもって行動し、一定の成果を挙げている職員です。しかし、結局は指示通りに仕事をして、同じことを続けることから抜け出せていません。「なんとなく一生懸命にやっているのでいいだろう」という安心感や心地よさをどこかに感じながらも変われない自分に気づいていません。
暖かいベッドから抜け出すことは勇気がいるし、これでいいよねと納得しているので踏ん切りがつかない状況にあります。ただ実は、厳しい冬の時代を迎えいつまでも布団が役に立つかも、またベットが壊れるかも分からず安心できません。
組織のなかでのマジョリティに属しているステージで組織が不確実性に対応することができない原因をつくっている職員がいるステージなのです。
組織は彼等がベッドから抜け出しスタンディングできるよう誘導しなければなりません。
チェアーのステージにいる職員は「腰かけ職員」といわれます。ここにいる職員は、独立度を評価すると高いポイントを付けられるけれど、どこか組織のベクトルと合っていない職員ですが、これをやりたいという信念をもち、将来を見通した目標を持ち自分の進むべき道をはっきりさせています。ある分野で高い能力もあり行動しますが、この組織のためには働きたくないと考えています。
もともと力があるため、外部からも一目おかれていることも多くあり、組織に背中を向けて椅子に座り、あからさまではないもののどこかでいつでも外に出ていく心の準備をしています。もともと自立していた人が組織の方針転換や上司との軋轢によりこのステージに降りてきてしまうということも多いと思います。本人のやりたいことを聞き入れ、適切な環境を用意できていない可能性があります。組織は、隠れ腰かけ職員を引上げ、彼らがもつポテンシャルを発揮できる機会を提供して改革を牽引できるよう誘導しなければなりません。
スタンディングのステージは文字通り「自立した職員(An independent person)」です。組織に順応しつつ依存せず、率先して自ら価値を生むことができる職員です。常に使命感や向上心をもち、プロフェッションとして求められる技術を身に着け、人から求められる職員です。人としての気遣いや思いやりをもち常に進歩しています。また、改革を進め高い生産性向上や価値創造を行ない進化しながら組織貢献し結果を出し達成感を得続けていく職員です。
既存の体制が許容する範囲で改善や改良を行うとともに変革の一部を担うことを改革といっていますが、まさに自立した職員には現場を変え、組織へリーンな情報を提供することで戦略に影響を与えていくことが期待されています。
なお、このステージにいる職員と組織の関係は平等(equal)です。なので組織はしっかりとしたリーダーシップをもち彼等が力を発揮できるよう環境整備をするし、自立した職員も自分の進むべき道を明確にしたうえで、良心に従い組織に応えていく必要があります。組織がそれを怠れば自立した職員は腰かけ職員になるか、そのまま組織を去ることになるでしょう。
自立した職員が多ければ多いほど組織は変革し不確実な未来を、胸を張り乗り越えていくことができるようになります。今回、職員の評価ステージを明らかにしました。
これからは「自立した職員を数多く輩出することを目的として課題解決によるステージ移動を行うためのISM」を活用し、
- 具体的な評価基準の使い方の説明、
- なぜそのようなステージ分布になっているのかの組織的課題、
- 個々の職員がなぜ現状のステージにいるのかの課題、
- そして彼等のステージを変えていくコミットメントによる課題解決の目標化、
- 解決支援
について詳細に検討していきます。
本稿が、ISMを理解した各組織が実際に依存度と独立度の評価基準をポイント化し、組織の現状を分析して課題を抽出し解決への対応を行う、そして職員は、自分はどのステージにいるのかを確認し、そこからどのように自立への道を辿ればよいのかを考えてもらう機会になればよいと思います。
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